小児疾患の症状
- 5歳になってもおねしょがつづく
- 昼間に尿をもらす
- 精巣が腫れてきた
- 精巣が下りてきていないと診断された
夜尿症
いわゆる『おねしょ』です。一般的に、週1回以上のおねしょがある場合に、夜尿症とされます。5歳くらいになると気にされるご両親が増え、小学校入学後も継続していると受診されるケースが増えてきます。5歳で15~20%、10歳で5~10%、15歳で1~2%、成人後も0.5%は夜尿症が完全になくならないと報告されています。また、女児よりも男児に多い傾向が見られます。
尿失禁
子どもの排尿障害の主な症状は、昼間のおもらし、おしっこの我慢ができない、少量の尿漏れなどの尿失禁症状です。排尿障害にはおねしょも含まれますが、夜尿症は夜間のおねしょのみの症状の場合に当てはまります。夜尿症と違い、排尿障害は放置すると尿路感染を繰り返したり、腎障害を起こすことがあり、専門医による的確な診断や治療が重要ですのでご注意ください。
排尿障害は、膀胱や尿道の神経・形態・機能に何らかの問題がある場合があります。二分脊椎という先天的な脊髄の病気や後部尿道弁といって先天的に尿道の形態が狭い病気の可能性があります。そして明らかな神経や形態の異常がなくても排尿障害が起こることも多くなっています。
包茎
おちんちんの先端の包皮口が狭く、包皮をむいて亀頭を完全に露出できない状態です。包皮は表から見えている外板と、内側に折り返している内板があり、幼児期に包皮口という折り返し部分は狭くなっているのが通常の状態です。男の赤ちゃんは包茎の状態が正常ですし、この時期には包皮と亀頭表面とが完全には分離せずにくっついていますので、亀頭部全体が包皮でおおわれていない場合、尿道下裂などの先天性異常を疑う必要があります。包皮がむけない状態がいつまで続くのかは個人差があり、ほとんどの場合、14~15歳の思春期を越えた男子は包皮をスムーズにむいて下げられるとされています。ですから、炎症を繰り返すなど特殊な場合を除き、子どもの包茎は治療する必要がありません。
亀頭包皮炎
おちんちんお先端が赤く腫れて痛がる包皮先端の炎症を起こすことがあります。これが亀頭包皮炎で、3歳前後の男の子によく起こります。短期間の抗菌薬の内服や塗り薬で改善しますし、軽症の場合温浴だけで治ることもありますが、あまり何度も繰り返す場合には包茎の治療も検討します。
陰嚢水腫
精巣周囲に液体がたまって陰嚢が膨らんだ状態で、男の新生児によくある病気です。子どもの鼠径ヘルニアと同じ原因により引き起こされます。
男児の精巣は胎児期におなかから陰嚢まで下降しますが、おなかの臓器を包む腹膜という薄い膜も一緒に引きずってくるため、陰嚢には腹膜が入り込んでいます。生まれる時はこの腹膜が閉じますが、ここが完全には閉じないケースが多く起こります。陰嚢に入り込んだ腹膜の腹膜鞘状突起は、おちんちんのすぐわきにある足の付け根の上の鼠径部にあります。腹膜鞘状突起が広くおなかとつながると腸が落ちてきて陰嚢が膨らむ鼠径ヘルニア(脱腸)になります。腸が下りるほど広くない場合には、おなかの中の水分がそこを通って陰嚢にたまり、陰嚢水腫を起こします。
移動性精巣
移動性精巣は、遊走睾丸とも呼ばれ、陰嚢内に精巣の存在がわかる時とわからない時がある状態です。停留精巣でなければ正常な反応の範囲ですから、基本的に治療の必要はありません。精巣には精管や血管以外に筋肉もついており、足の付け根付近からぶら下がっています。筋肉が収縮すると精巣が鼠径部にある鼠径管内に上昇するため、陰嚢を触れても精巣の存在がわからない場合があります。こうした筋肉反射は思春期前に起こります。基本的に、リラックスした状態で陰嚢に左右が同じ大きさの精巣が存在しているようでしたら問題ありません。
停留精巣
陰嚢の中に精巣(睾丸)が入っていない状態です。生殖腺である精巣と卵巣は発生的には同じものであり、妊娠2ヶ月までは区別のつかない状態でおなかの中に存在しています。女の子の場合、卵巣はそのままおなかの中で動きませんが、思春期になって作りだす精子が精巣の温度が体温より低い環境を必要とするため、胎児の時期に下降して陰嚢に収まります。
停留精巣は、男の子の先天的な異常の中で一番頻度が高い疾患であり、予定日で生まれた男の子100人のうち3人程度の頻度で発生し、早産の場合には頻度がさらに高まります。また、生後半年までは自然に精巣が下りてくることがあり、それ以降は自然下降しないため、1歳後の停留精巣は100人に1人程度の頻度になります。
尿道下裂
男児のおちんちんに起こる先天的な形態異常で、尿の出口が先端ではなく手前に空いてしまっている状態です。尿の出口ができる場所は、気頭部手前のくびれ周辺から、おちんちんの付け根、陰嚢までさまざまです。
神経因性膀胱
漏れさせずに尿をためて、排尿の際には勢いよく出す膀胱の仕組みに不具合が生じます。尿漏れや、排尿困難などが起こり、腎臓障害にもつながるため、早めに受診しましょう。
水腎症
尿を作る腎臓が作った尿を腎臓外にうまく排出できずに貯めてしまい、腎臓が腫れてきます。20~50人に1人の頻度で胎児に認められる疾患です。
血尿・蛋白尿
お子さんが、健診などで血尿・蛋白尿で引っかかる場合があります。原因となる疾患がある場合は、早期の治療が必要です。しっかりとした検査を受けるようにしましょう。考えられる疾患としては、ネフローゼ症候群(腎臓から尿に蛋白が漏れてしまう病気)、急性糸球体腎炎(溶連菌感染後に発症する病気)、尿路感染症、などが考えられます。
腎盂腎炎・膀胱炎などの尿路感染症
腎臓や膀胱が細菌感染することで発症します。排尿時に痛みを感じたり、頻尿となります。症状が悪化すると入院治療が必要になる場合もあります。治療は、薬物治療を行います。学校の健診などで血尿・蛋白尿の指摘があった場合は、早期に当院を受診するようにしてください。
膀胱尿管逆流症
膀胱に溜まった尿が尿路を逆流し、尿管、腎臓に上ることで起こります。腎臓の感染のほか、膀胱の圧力が加わることで腎盂炎や水腎症を起こす可能性があり、腎機能低下につながりかねない病気です。